医療保障を確保するには、生命保険に特約と して付加する方法と、単体の医療保険に加入す る方法があります。死亡保 障は不要だが、医療保障は しばらく続けたいなど、見 直しのタイミングは異なり ますので、それぞれ単独で 加入するほうがよいと思い ます。 医療特約も医療保険も、 医療法に定める病院や診療 所等に入院することが給付の条件です。通院での手術を保障対象とする保 険も多いのですが、入院給付金の5倍くらいの 手術給付金(入院日額5,000円で25,000円)が もらえる程度です。健康保険の高額療養費制 度*3もありますので、保険にこだわらず、預 貯金で賄うという考え方もあります。 貯蓄がないため入院費用が払えないとか、長 期入院になると経済的に厳しいといった人は、 シンプルで割安な医療保険の加入を検討しま す。図2で見たように、時間が経過して貯蓄が 増えれば保険に頼らなくてもよい時期がきま す。そのためにも、貯蓄の妨げにならない程度 の保険料にとどめておくのが賢明です 生命保険にしろ医療保険にしろ、保険料払込 期間が長くなるほど、コストパフォーマンスが 悪くなります。なぜなら、保障内容は変わらな いのに、今まで支払った保険料の総額が積み上 がっていくからです(図4)。また、医療保障は 公的医療保険や医療の提供体制と深いかかわり があります。医療保険は入院が基本といいまし たが、平均入院日数は短縮傾向が続いています。 とはいえ、高齢になるほど入院日数が長くな る傾向にありますので、将来に備えて医療保加入するという人も多いようです。しかし、 今後75歳以上人口が増え、15 ~ 65歳の生産 年齢人口が減っていくのは確実です。医療や介 護サービスの担い手が減っていくわけですか ら、国は病床機能(急性期・回復期・慢性期)の 分化を図り、病床数を削減して集約する方向に 動いています。 地域包括ケアシステムという言葉をよく耳に しますが、かかりつけ医や薬局薬剤師などの専 門職と連携し、在宅医療やさまざまな介護関連 サービスを利用しつつ、看み 取りまで地域で行う ことをイメージしています。介護医療院などの 介護関連施設で長期療養することになれば、医 療特約や医療保険の給付要件には該当しませ ん。また、本人に請求能力がなくなることも考 えられます。本人に代わって請求できる指定代 理請求人の制度はありますが、指定できるのは 保険会社が定めた所定の親族に限られます。 これまで経験したことのない将来が待ち受け ているのですから、「所定の入院」「所定の手術」 など、過去のデータに基づいて設計される保険 商品より、使い道を自由に決められる貯蓄のほ うがフレキシブルに対応できます。貯蓄をしっ かり積み上げていくためにも、保険料支出が過 大にならないよう、現役時代にはシンプルで割 安な保険を利用するとよいでしょう。

医療保険に加入する前に健康保険について学ぼう

 さまざまな医療保険も熱心に売られているが、加入する前に、自分が加入している健康保険の内容を調べて、それでも必要だと思う場合があるならば、加入を検討すればよい。

 特に重要なのは、健康保険の高額療養費制度である。治療費がどれほど高額になっても、自己負担額には上限が設けられており、その上限もそれほど高くないので、医療費が払えなくて困窮するといったことは通常、考えにくいのである。

 金融資産がほとんどなくて、その上限さえも払えないという場合には医療保険が必要なのかもしれないが、その場合には治療費が払えなくなる可能性よりも、医療保険の保険料が払えないという心配の方が大きいだろう。

 したがって、最低必要な医療を受けるだけであれば、医療保険は原則不要であろう。差額ベッドの費用を保険で賄いたい、といった個別の事情があれば別だが、その場合にも「保険は確率を考えれば損な契約である」としっかり認識した上で、それでも加入すべきかを慎重に検討するべきだ。